ある時期忙殺されていた。Iが離れてから早く人手が欲しいと思いながらも、一向に有力な人員は追加されず、苛立ちが募っていた。
そんなある日、別の部署でK(機会・きかい、嫌い・きらい)からNのもとに仕事の相談が来た。このKは仕事を部下に丸投げし、その成果を自分のものとしてのし上がる人間としていろいろな人々から嫌われていた。
K:「Nさん、うちの部署で担当する仕事なんですが、やや人手不足に悩まされており、かつ仕事内容もうちとそちらの両方が関わりそうなものでして、ちょっと分担できないか相談させていただけないでしょうか?」
話を聞いてみるとなにやらNがちょっと前にこんなことがやりたいと社長に伝えたものだった。だが、いくつか問題があった。Nは忙しかった。そして、なにより他人に仕事を丸投げして自分がやったかのように振る舞う卑怯者のKが嫌いだった。
この瞬間、二つのシナリオがあり得た。
選択肢
■シナリオ1
N:「(来たな、丸投げ星人め。いつも自分の手柄のように振る舞うお前のような人間が私は心底嫌いだ。こっちだって忙しい。『自分のところで引き受けたなら責任を取れ!』と言ってやろうか。さぁ、困ったK、お前はどうする?)話はだいたいわかりました。が、そちらは人手不足でお困りなのかもしれないですけど、こちらも皆さんと同じくらい忙しいんですよね。そちらで引き受けたのでしたら多少汗をかいてでも責任を持って取り組んだらいかがでしょう?」
■シナリオ2
N:「(また丸投げ一本勝ちを狙っているのか?餌をちらつかせてくるとはなんとも憎い。タイミングが悪いし、本来なら冷徹に断ってやるところだが、こちらに相談を持ちかけたのが社長の指示だとしたら、こちらがKを嫌いというのは関係ないわけで…)まあ、ちょっとこちらもちょうど人が抜けたタイミングなのでそちらが期待するような分担にはならない可能性は高いですが、それを承知いただけるならもう少し詳しいことを詰めていきましょう」。
結果
今回に限ってはNは落ち着きを欠いていた。シナリオ1を実行し、憎きKを冷たく追い払ったのであった。Nはとても気分が良かった。
しかしKはその後また別の誰かに相談を持ちかけ、引き受けた人はその仕事で成功を収めて表彰されたのであった。
Nはというと、その成功を見て少々自分が間違っていた可能性を疑ったが、「ちょうど忙しかったし、また別の機会を待てばよかろう」と自分を納得させ、その位置にとどまって仕事を続けていた。
-第五章へ続く-